日本に一時帰国して、韓国に戻ったその日の夜、私は友達の家に行くためにどでかい鞄を抱えて地下鉄に乗っていた。鞄の中身は日本で買ったお菓子や化粧品、雑貨やお酒などのお土産だったが、日本酒が好きな友達のために買ってきた一升瓶を入れていたのでかなり重かった。
入り口近くに立っていたが、退勤時刻と重なりどっと人が乗り込んできて、いつのまにか優先席の前まで押しやられた。目の前に座っている白髪のおじいさんがじぃっと私を見ている。
「じょうちゃん、荷物よこしなさい」
手をだして言った。私の荷物を持ってくれるというのだ。
最初は驚いたが、韓国ではバスや地下鉄で座っている人が立っている人の荷物を持ってくれるというのはよくあることだ。黙って手を差し伸べてくるひともいるので、初めて見たときは、この人は何か欲しいのかな?などと思ってしまったことも・・・。失礼しました。
でもこのときは、優先席だし、お年寄りだし、私の荷物はとても重かったので
「いいです。重いんです~」
と言って、丁重に断ろうとしたが、おじいさんも譲らない。
「いいから、よこしなさい!」
私の鞄をぐいぐい引っ張る。しばらく二人で引っ張り合いをして、結局私が折れた。おじいさんは、
「重そうであんたがかわいそうだからね。私は座って持っているから重くないんだよ」
と言ってくれた。
私はおじいさんが降りるとき、深々と頭を下げてお礼を言った。
韓国人は情に厚くて、親切。そして、韓国人男性は女性に重いものは持たせない。恋人同士だけじゃなく、友達の関係でもそう。知らないひとでも、駅の階段で女の人が重い荷物を持って上がっていたら、さっと持ってくれたりする。韓国は伝統的な儒教社会。男性優位の社会なので、女性は弱くて守るべきものという考えからかもしれないが、日本人の私の目には新鮮に映った。

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