北海道のみなさん、こんにちは。
20年から10数年前までは、CMで大自然の風景を撮るとなると、
前田真三さん写真集を、よく参考にさせていただいたものでした。
それが、気がついてみると、めっきり打ち合わせの席に登場しなくなった。
その理由は、CM表現と、CM業界の、大変革にあります。
ここ、10数年の間に、CM業界に、デジタル化の大波がやってきました。
撮影こそ、相変わらず、35フィルムで行うのが大半ですが、フィルムを
ビデオに変換して、その後の編集などを行なうようになりました。
さらに、ビデオの映像をディスクに取りこんで、
コンピューターをフルに活用しながら、デジタル編集していきます。
その、フィルムをビデオに変換する作業(業界ではこれを"テレシネ"と呼んでいます)や、
編集のプロセスで、フィルム時代にはできなかったさまざまな「映像の加工」が可能になりました。
曇り空を青空に、枯れ草を消して緑の大地に、
欲しいところに木立や家を足し、雪や雨を自在に降らし、
土色がむき出しの地面を雪景色に、そんなことが、毎日、毎日、
あちらこちらの編集室で行われるようになりました。
何日も、同じ場所にカメラを構えて、かけがえのない自然を撮るという姿勢が、CMの世界から、少しずつ消えていったのです。
動いている、何枚もの画の積み重ねである映像表現においてそうなのですから、静止画のグラフィック広告においては、さらにその変化は決定的です。
一枚の風景写真を都合よく作り変えるなんてことは、いとも簡単なことです。
そして、インターネットの登場です。
もう、わざわざ本屋に行って前田真三さんの本を探してこなくても、
いまなら、「北海道 富良野 大地・・・」などと、キーワードさえ入力すれば、簡単にネライの画像を入手して、打ち合わせの資料にすることができます。
おまけに、デジタル化の大波は、バブル崩壊後の景気後退とも重なっていました。
わざわざ北海道まで行って、何日もかけて撮影してこなくても、
デジタル編集やコンピューターグラフィックス(CG)の力を借りれば、
望みどおりの風景を手に入れられる。
その方が、ずっと経費節減につながる。
そんな風潮が、CM業界を席巻しました。
もうひとつ、理由があります。
有名タレントが出演する、いわゆる「タレントCM」が全盛でもあった、この10数年。
何千万円もの契約金で出演するタレントでも、CM撮影のために割いてくれる時間は、わずか一日、あるいは数時間のときもあります。
いよいよ、理想の風景や、理想の光を求めている場合ではなくなったのです。
あれほど、CMの企画や撮影で参考にした前田真三さんの写真。
その、加工なし、一発撮りの、美しい風景は、もはや、
都合よく短時間で望みの景色を手に入れるCM業界の現実とは、
かけ離れたものになってしまったのかもしれません。
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