このコラムで最初に書いたように、ぼくが初めて北海道で撮影したCMは、雪印チーズのCMでした。
どういうわけか、ぼくの手元に、CMのビデオが残っていなかったのですが、ふとしたことからCMを撮影していただいたカメラマンの鋤田正義さんの手元に残っていることがわかりました。
無理を言って、CMをDVDにコピーしてもらいました。

1988の作品です。
いまのCMに比べたら、のんびりした素朴な作りに、我ながら驚いてしまいました。
そして、このCMのいちばんのアイデアは音楽。
サイモン&ガーファンクルで有名なこの曲(スカボロー・フェアー)は、本来こんなにも民族色の濃い曲調(スコットランドの)だったんですね。
さて、今回からぼくが北海道でロケしたCMを、いくつか取り上げて、その思い出話をしてみようと思います。
北海道のみなさんに興味のある話ができるかどうか、自信がありませんが、北海道がどんな風にCM撮影の舞台になっているか、その一端を知っていただければ幸いです。

これ、何年前のCMでしょう?
大雑把に10数年前?としか、はっきり自分でも思い出すことができません。
タレントは石田ひかりさん。
商品は、大塚製薬のカロリー・メイトです。
「忙しい日常を過ごす人に、手軽にカロリー補給してもらえる食品」、カロリー・メイトの訴求ポイントは、今も昔も変わりません。
でも、「忙しい日常を過ごす」と言っても、OLの設定ではありきたりすぎる。
ということで考えたのが、牧場で競走馬の飼育係をする女性、というアイデアでした。
競走馬を飼育している場所で、CMのロケ地として魅力的な風景と言えば、日高・静内町。
北海道としては、雪の少ないこの温暖な地域に、「サラブレッド銀座」と呼ばれるほど、大小さまざまなサラブレッド育成のための牧場、厩舎があります。
限られたエリアの、わずかな期間のロケハンでしたが、かつて有名な競走馬だった繁殖馬を持っている勢いのある厩舎、過去の栄光はあっても今はパッとしない厩舎、そんな華やかさとはもともと無縁な小規模な家族経営の厩舎、一口に厩舎と言っても、いろいろあるものだと、思ったものです。
ぼくは、このCM以外にも、いくつかJRAのCMをやらせてもらったことがあり、何度か馬の撮影をしていますが、あらゆる生き物の中で、馬ほど美しい被写体はいないのではないかと思っています。
凛とした立ち姿、筋肉を波打たせて走る姿、毛艶、光る汗、体から立ち上る湯気。
馬小屋の暗がりにいても、牧場にたたずんでいても、川の浅瀬や雪景色にいても、馬の姿は美しい。
だけど、馬の撮影ほど難しいものもまた、ないのです。
とにかく神経質な生き物。撮影ともなれば、大勢のスタッフが馬の周りを取り囲みます。
とりわけ、照明に使う、フィルターや紙の、ガサガサという音が、苦手なようです。
防ぎようのない、ちょっとした物音に反応して、予想もしない動きをする可能性があります。その上、穏やかなある程度年のいった馬を使えばいいのですが、扱いの難しい若くて、気性の激しい馬ほど美しいときているのです。
その馬に、タレントさんが直接触れるのですから、事故が起こらないよう、いつも現場はピリピリムード。
しかし、その時の石田ひかりさんもそうでしたが、芝居の相手やカメラなどの動きと気配を、常に察している役者さんには、普通の人にはない、独得の勘のよさがあります。
まさに、動物的勘のよさ、です。
それに有名タレントともなれば、カメラが回りだせば、なんとも言えない集中力やオーラを発するものなのです。
「馬に接すれば、いい役者かどうかがわかる」とまでは言いませんが、よほど馬の扱いに慣れた人ならともかく、あれほど神経質で、人を見て(時には見下して)動く動物を相手に、毎回、よく撮影ができるものだなぁと、驚いてばかりでした(って、他人事のようですね・笑)。
この時も、石田ひかりさんが、運動して汗をかいた競走馬を、洗って手入れするという設定で演技してもらったのですが、プロの調教師が感心するほど、まだ若い競走馬がおとなしく身を任せていました。
それにしても、日高山脈に続く穏やかな静内の風景には、馬がほんとうによく似合います。
年間、何本のCMが撮影されているかはわかりませんが、映画も含めて、大小さまざまな規模の撮影が、いまも盛んに行われているはずです。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第12回 カロリーメイトの撮影~静内町
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