なるほど情報ウェブマガジン【週刊コラナビ北海道】毎週木曜日更新

週刊コラナビトップディレクターズ・カット

ディレクターズ・カット

第93回 ビートルズを聴きながら、いまを考える④

北海道のみなさん、こんにちは。

先週は、いま、CM業界で、
従来の35ミリカメラから、
ハイビジョン・デジタルビデオカメラへの移行が
進んでいる様子をお伝えしましたが、
写真を使ったグラフィック広告の制作の現場では、
事態は、もっと「深刻」です。

広告写真の世界(スティール)では、
CMの世界(ムービー)とは、比べ物にならないほど、
撮影のデジタル化が、進んでいます。
いまや、広告写真の撮影で、
デジタルカメラを使わないカメラマンは稀でしょうし、
撮った画像をデジタル処理しないことなど、
あり得ないでしょう。
いや、それどころか、フィルムや印画紙の存続が
危ぶまれていると言っても、過言ではありません。
(すでに、あれほど広告写真の世界に
なくてはならないものだったポラロイドが、
姿を消したのですから。)

それでも、ぼくの知る限り、
ベテラン、若手を問わず、多くのカメラマンは、
フィルムで撮影して、好みのトーンにプリントする作業が、
大好きで、それを、大切に考えています。
数年前から、銀塩写真の存続と、
その素晴らしさを伝えようと、
いま、もっとも活躍するプロ写真家が集まって、
トークイベントやワークショップ、展覧会などをする、
ゼラチン・シルバー・セッション(GSS)なる活動も、
積極的に行われています。

そう言えば、先日、
テレビ(BS)で、故・市川崑監督の「おとうと」という映画が、
ニュープリントされて、オンエアーされましたね。
その時、ちょっとしたドキュメンタリー番組があって、
とても興味深く見ました。
「おとうと」は、世界で初めて、
「銀残し」という手法で現像された映画なのだそうです。
ぼくがCM撮影で組むカメラマンも、よくこの手法を使います。
撮影したフィルムを現像する際、取りはぶいてしまう銀を、
あえて残すことで、コントラストの強い、
ややモノクロがかった渋い色調の映像が生まれる
技法なのだそうです。
それが、市川崑監督と、宮川一夫カメラマンによって
生み出されたとは、ぼくも知りませんでした。

それはともかく、
その技法について、東京現像所というところの技師が
インタビューに答えている姿を見て、
「ああ、こういうフィルム現像の技術そのものが、
まるで伝統工芸の世界の話のようになっていくのだな」
と、ぼくは思いました。
ぼくらが、35ミリカメラから、
ハイビジョン・デジタルカメラへの移行に、
危機感を持っているとするなら、
フィルムを生産する、コダックやフジフィルム、
フィルムを現像するイマジカや、東京現像所
などというところが抱く危機感は、それ以上でしょう。
まだまだ、消えてなくなることはないけれど、
ますます伝統工芸のように「特殊なもの」として、
保護と保存の対象になって行くのかもしれません。

あ、不用意に、
「危機感」という言葉を使ってしまいましたね。
でも、そうなんです。
撮影をめぐる、技術とテクノロジーの、大変革の時代に、
どうやらぼくらは、期待感よりも、
不安感や危機感をより強く持っているような気がします。
少なくても、自ら進んでそれを押し進めると言うより、
なんとか、現状にアジャストして行かなければ、
という気持ちの方が強い。
「技術とテクノロジーの、大変革」は、
この大不況によるコストカットとセットになって、
ぼくらの目の前に突きつけられている現実である
という側面を持っています。
そして、何より、ぼくが危機感を抱くのは、
撮影や現像の、アナログからデジタルへの移行は、
「いっしょにモノ作りをする喜び」を失わせると思うからです。
いや、それはすでに、モノ作りですらないのかもしれない。

ビートルズの音楽にあって、
いま、CMをはじめとする映像産業に
なくなろうとしているものか何か?
そろそろ、結論を考えるべき時ですね。


(2009年11月12日)

コメントする


画像の中に見える文字を入力してください。

文字は半角英数字で入力してください。
(画像が表示されない場合、画像のところでマウス右クリック-[画像の表示]を実行してみてください[Windows InternetExplorer, FireFoxの場合])

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第93回 ビートルズを聴きながら、いまを考える④

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2014