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第92回 ビートルズを聴きながら、いまを考える ③

北海道のみなさん、こんにちは。

いま、ぼくたちテレビCMを制作する現場にいる人間は、
撮影方法をめぐって、大きな変革期にあります。
従来なら(少なくても10年も前なら)、
CM撮影と言えば、よほどのことがない限り、
35ミリカメラを使うのがあたり前でした。
撮影時に録音があれば、サイレントカメラを、
そうでなければ、フィルムの回る音がするカメラを
(こちらの方が安価なので)、機材屋でレンタルする。
ほとんどの場合は、
ドイツ製のアリフレックス社のカメラを使いますが、
一時期、アメリカ製のパナビジョンというカメラが
流行ったこともありました。
そして、35ミリカメラなら、
当然、35ミリフィルムを使用します。
圧倒的に多いのが、コダック社製のフィルム。
多少のトーンの違いを求めて、
フジフィルム社製のフィルムを使うカメラマンもいます。
撮影の狙いによっては、好感度フィルムを使ったり、
通常、400フィートのフィルムを、
1000フィートにして、フィルム交換の頻度を
少なくする(長くカメラを回しっぱなしにする場合などに)。
それくらいの選択肢が、撮影というものの常道でした。

もちろん、すでに70年代後半から、
ビデオカメラというものがあり、
通常、テレビ局の番組制作でよく使われるカメラを、
あえてCMに使うケースも、ないわけでありませんでした。
たとえば、「ピカピカの一年生」という、
小学館のCMを、みなさんは、覚えていらっしゃいますか?
いろんな地方の小学生が、カメラ目線で、
「小学校に入ったら」と抱負を語る、
なんとも微笑ましいCM。
あれなどは、ビデオにしか出せない「臨場感」を
ビデオカメラで狙って、大成功した例だと思います。
が、多くの場合、CM撮影でビデオカメラを使うことは、
よほど予算がない時の「特例」に過ぎませんでした。
カメラのレンタル料が安い上に、
フィルム代やその現像費もかからないのですから、
うなずけます。

それが、ここ数年の間に、フィルムからビデオへ、
35ミリカメラから、ハイビジョン・デジタルビデオカメラ
(通称HDカメラ)へと急速に移行している。
それが、CM業界の現状のようです。

「ようです」と、他人事のように言うには、訳があります。
ディレクターやカメラマンによって、
大きな「個人差」があり、ぼくなどは、いまだに、
ほとんどHDカメラを使うことがないからです。
どうやら、若いカメラマンやCMディレクターになるほど、
HDカメラを使う頻度が高いというのが、
一般的な傾向のようです。
理由は、簡単。HDカメラの方が、安く上がるから。
そもそもレンタル料が安い上に、
フィルムやその現像費にかかるコストが
要らないのですから、当然のことでしょう。

先日、40代半ばの、中堅のカメラマンと話をしていて、
彼の場合で、35ミリカメラとHDカメラが、半々。
もっと若いカメラマンなら、ほとんど場合、HDカメラに
ならざるを得ないというのが現状だと聞きました。
CMの制作会社によっても、
HDカメラの導入には温度差があるのですが、
昨年あたりから、特例以外は、
従来の35ミリカメラを使ってはならないことを、
会社の方針にしているところも出てきたようです。

いずれにしても、撮影の打ち合わせになると、
いまや、必ず出る話題のひとつが、
HDカメラを使うか否か。
それも、何か、ネライがあっての話ではなく、
予算削減のために、なんとかHDカメラにならないものか、
と相談されることが多くなりました。
いや、もうその話題を避けて、
撮影というものが成り立たなくなっている
と言っても過言ではありません。

そして、ついに、HDカメラへの移行を
加速させるようなカメラが登場しました。
レッド・ワンと呼ばれる、機能も仕上がりも、
たいへんフィルム・ルック(フィルムに近い感覚)
のカメラが登場しました。
キャノンからも、動画が撮れる
高性能デジタル一眼レフカメラ、7Dが出て、
これも戦列に加わろうとしています。
実際使ってみましたが、テレビで見たら、
35ミリのムービーカメラを使ったCMと、
見分けがつかないほどのニュアンスを持っています。

ますます、ビートルズから遠く離れた、
込み入った話になってきましたね。
それでも、ビートルズを聴きながら、
この業界大変革の話は、また来週続けたいと思います。


(2009年11月05日)

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