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第89回 土地の、力。

北海道のみなさん、こんにちは。

先月の末に、取材を兼ねて行った、
石川県・輪島市は、言うまでもなく、
輪島塗で有名なところ。
古くから漆器を製造・販売されている方が、
こうおっしゃったのが、まだ耳に残っています。
「輪島という土地柄と、
輪島の人たちの気質がなかったら、
輪島塗は生まれなかったでしょうね。」
能登半島にある輪島は、交通の便が悪く、
金沢や七尾に比べても、電車、電気が通じるのに、
かなり遅れをとった「閉ざされた町」だったようです。
そして、辛抱強い輪島人の気質があって、
丈夫で完成度の高い輪島塗は、
早くから全国的に有名になっていったようです。

つい数日前、山梨県・北杜市で見たのは、
故・木村二郎さんの回顧展。
木村さんは、1989年に、
大阪から山梨県・長坂に移り住んで、
主に古材で、多くの家具やオブジェを制作しましたが、
惜しくも2005年、膵臓癌でなくなりました。
それ以前に住んでいた大阪を離れ、
バブル経済に湧く都会に一定の距離を置き、
縄文土器のかけらを集めながら、
古民家から出る廃材で、
作品とも家具とも言いがたいモノを作る。
廃園になった幼稚園を改造して作ったギャラリーには、
都会から、多くのアーチストが引き寄せられて、
作品を発表する場になりました。
東京から長坂までは、電車でも車でも、一時間半。
絶妙な距離感だった気がします。

先日、札幌のハンズビーで、
ぼくが制作したシャボン玉石けんのCMを
流してくださった大垣郁子さんにお会いしました。
お土産にいただいたのが、なんと、石けん。
「北海道で生まれた石けんもあるんですよ」と、
言ってくださったのは、
アズキ石けんと、ヤギのミルク石けんでした。
製造販売元には「GEL-Design」とあり、
後で調べてみたら、「北海道大学の研究成果をもとに
商品開発するベンチャー企業」とわかりました。
アズキに、ヤギのミルク。
北海道ならではの素材を生かした石けんに、
ちょっと、うれしくなりました。

輪島塗、木村二郎、GEL-Designの石けん。
この2、3週間の間に、何の脈絡もなく、
ぼくが出会ったものと出来事を書き並べたに過ぎません。
でも、ひとつの共通点がある気がします。
それは、土地の力。

あたり前のことかもしれませんが、
人が作るモノには、その土地と強いつながりがあります。
その土地でなければ、生まれなかった何かが、必ずあります。
あらゆるモノは、風土や気候、そこに住む人たちの気質など、
その土地の磁力に影響されて、生産される。
そして、その磁力から生まれたものが、
これからのぼくらの暮らしに強い影響力を持つのではないか。
漠然と、そんなことを考えています。
いや、そう考えざるを得ないことが、
いま、ぼくの周りにたてつづけに起こり、
気になって仕方がないのです。

かつては、土地の磁力から離れたモノが、
圧倒的に支持されていました。
その代表が、巨大メーカーが作る、大量生産品です。
ぼくら、昭和20年代や30年代に生まれた人間も、
土地の磁力から離れる生き方を目指してきました。

遠くへ、少しでも遠くへ。
遠くから、もっと遠くから、少しでも高性能なモノを。
そして、いま。
帰るべき場所に帰ろう。
近くで、いや、自分が立っている足元で、
生まれるモノを、見つめ直そう。

一見、バラバラに起っていることが、
指し示すのは、大きな時代の転換点。
土地の力に根ざしたモノ作り。
土地の力に呼応する生き方。
それを無視して、
これからのぼくの仕事や暮らし方は、ありえない。
そんな気がしています。


(2009年09月17日)

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