北海道のみなさん、こんにちは。
CMディレクターとして、ぼくはどちらかと言うと、
「人間ドラマ」が得意に思われがちです。
でも、実は、人間も、風景も出てこない、
真っ向から商品と向き合うCMも大好きです。
ほんとうに力のあるクリエーターなら、
堂々と、シンプルに商品だけを写し、
それでも、ハッとしたり、笑ったり、
なるほどなぁ、と思わず唸るようなCMが
できなければいけない。
よくそう思いますし、実際、それでうまくいったら、
なんだかとても正しいことをしたような、
すがすがしい達成感があるものです。
それに、たとえば、グラスの中でビールが踊ったり、
石鹸の泡が水に洗い流されたり、
フライパンの上でオイルが飛びはねたりするのを撮ること、
いわゆるシズル撮影は、それ自体が、ドラマなんです。
思ったように、うまく行かない。
ハプニングがつきもの。
果てしなく撮影時間がかかる。
でも、うまく行ったら、
その商品が、とても素敵に見えてくる。
商品の、「生きた姿」を捉えることができる。
風景や人を撮ることは、映画やテレビドラマと、同じ。
短い時間で、人をハッとさせたり、
感動させたりしなければならないところが、違うだけ。
でも、大の大人が、せいぜい、カメラ前の、
一メートル四方の世界に繰り広げられる「できごと」に
集中して、商品やそのシズルと格闘している姿は、
他ではないものです。
それこそ広告、王道です。
おもしろくないわけがないのです。
このコマーシャルも、そうでした。

サントリーが、東京でとびきりいい果物を買うなら
ここしかないと言われる千疋屋とコラボして作った
「銀座カクテル」という商品のCM。
カクテルに入っている、マンゴーやメロン、桃などを、
いかにおいしそうに見せるか。
果物が、微発泡のお酒と、
シェーカーの中で混じりあうときのシズル感。
缶に入った商品を、どうしたら、
よく冷えたカクテルのように、
魅力的に見せることができるか。
撮影で挑戦したのは、そんな、
まさに商品と真っ向勝負の画作りでした。
さて、そこからが、大変。
最高においしそうな、マンゴーやメロンや桃、
そのものを手に入れなければなりません。
撮影が、果物の収穫期と一致するとは限りません。
場合によっては、海外から取り寄せる、
ということも視野に入れておかなければ。
(実際、そんなことが起ったのですが。)
そうだ、フルーツをカットする専門家を見つけよう!
スタジオには、フルーツをカットして30年、
その道の第一人者に来てもらいました。
フルーツをもっとジューシーに見せたい。
果汁が、カットした時、飛び散ったり、
皮をむいた時、たっぷり垂れてくるようにしたい。
特撮スタッフの出番です。
詳しくは言えませんが、あの手この手で、仕掛けを考えます。
シェーカーを振る手にだって、こだわりたい。
最高のバーテンダーを見つけなくちゃ。
いや、その前に、まず、ぼく自身が、
フルーツカクテルの、ホンモノのおいしさを知っておきたい。
そこで、カクテルの名手がいる、銀座のバーをはしごします。
商品の見せ方にも、ひと工夫。
水を張った床を、しずくを飛ばしながら、
缶が滑っているというのは、どうだろう?
そこまで準備して、いい画が撮れました。
でも、もう一息。
だれにもわからないように、
ちょっとだけ、CGの力を借りようか・・・
そうやって生まれたのが、
サントリー・銀座カクテルのCMでした。
でも、そのCMの、人を引きつけるアイデアは、
もっと他にありました。
おいしそうな画を見ながらしゃべっているような、
吉田日出子さんの、なんとも「味のある」ナレーション。
そのキャスチングと、コピーに、勝因があったと思います。
(実際、CMがオンエアーされるや否や、
「飛ぶように売れた」と聞いています。)
アイデアが試される。
実力が試される。
おいしいを、CMで表現して、
それで商品を動かすのは、
まさに、ぼくたちクリエーターの腕の見せどころ。
もう一度言います。
それでうまくいったら、
なんだかとても正しいことをしたような、
すがすがしい達成感があるものなんです。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第85回 おいしいを、CMで④
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