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ディレクターズ・カット

第78回 C.Iって知っていますか?②

北海道のみなさん、こんにちは。

Dream Skyward (日本航空)
美しい明日を作る(ライオン)
Make it possible (キャノン)
We Build Heart (大和ハウスグループ)
With Your Life (日本通運)
ヒューマンヘルスケア(エーザイ)
Designing The Future (KDDI)
ちゃんと、ちゃんと。(味の素)
おいしさとやすらぎを。(ハウス食品)
自然を、楽しく、おいしく。(カゴメ)
Inspire The Next (日立グループ)
Meet Your DELIGHT (日本たばこ産業)
・ ・・
どうです?
ぼくが関わった仕事で、思い出せるだけでも、こんなにいっぱい。
まだまだある、いや、やった仕事の数だけあるとさえ
言えるでしょうから、ホント、切りがありません。

ひとつひとつに、その企業の思い入れは相当なものがあり、
それに費やされた時間と予算、クリエーティブな労力は
計り知れないものがあります。

かつて(80年代後半)は、
「こんなC.I.が付くのなら、仕事を降りる!」と
豪語したディレクターの話も聞きましたし、
勝手にデザインをいじってしまったり(だれがやったかは言いません)、
「これじゃ長過ぎる」と、わからない程度に
C.I.を短くするなんてことは日常茶飯事。
もともと2秒あったのが、いろんなディレクターが
ちょっとずつ短くするうちに、いつのまにか1秒になっていた、
なんてことがあったくらいです。
音だって、思いっきり、小さくしぼってしまう。
「おいおい、もうそれくらいにしてくれ」とクライアントの担当者が笑う。
いまでは考えられない、そんな、なんとも悠長な時代があったのです。

C.I.ひとつにも、歴史があります。
80年代の終わり頃から90年代にかけて
(つまり、またもやバブル期の話になるのですが)、
クリエーター主導で、おもしろいC.I.が生まれたこともありました。
その代表が、「目の付けどころが、シャープでしょ。」(SHARP)
街の、なんでもないところ(壁や電信柱)に、
そのスローガンが書かれた紙が張ってあるだけの
ポスターやテレビCMが、ずいぶん話題になりました。
仲畑貴志さんのコピー、副田高行さんのデザイン、
CMは川崎徹さんのディレクション。
企業の言いたいことが、そのまま、
万人受けする、いや、だれよりも企業の人が安心する、
言葉やシンボルマークに置き換えられることの多い
「普通のC.I.」と違って、
そこには、ちゃんとクリエーティブが存在しています。
そう、クリエーティブとは、おもしろく伝えること。
クリエーターは、クライアントの言いたいことの代弁者ではないのです。

「ちゃんと、ちゃんと。」の、かつての味の素のC.I.にも、
それこそ、ちゃんと、アイデアがありました。
牧瀬里穂が、カメラ目線で「ちゃんと、ちゃんとの、味の素」
とメッセージするCMもたくさん作られましたね。
普通なら、企業が「ちゃんと製品を作っている」ことだけを
メッセージしがちなC.I.と違って、
「ちゃんと食事をしよう」という消費者目線が、そこにある。
シンプルで、なかなか巧みですよね。
そうそう、「おいしい顔。雪印」の雪印乳業だって、印象に残っています。
♪おいしい顔って、どんな顔〜というCMソングがあったから、
なおさらでしょう。
良し悪しは別にして、一方的に企業の言いたいことが
言えているだけのC.I.にはない、
わかりやすさ、親しみやすさがあります。

90年代も後半になると、
盛んに「ブランディング」ということが言われ出しました。
日本を代表する大企業が、こぞって企業のロゴマークを見直す、
というような時期があったと記憶しています。
外資系(主にアメリカ資本)のブランディング専門会社も入ってきました。
JALやTOYOTAや大和ハウスの
企業ロゴやマークのデザインが、それにあたると思います。
ロゴマークにとつに、長大な意味を持たせ、
その使用方法には厳密なマニュアルが導入され、
言うまでもなく、莫大な費用がそこに発生するようになりました。
よくはわかりませんが、かつては、
企業の創設者や代表者の好みであったり、
デザイン界の大御所先生が考えた企業のロゴマークに、
科学的なメス(マーケティング?)が入れられた。
80年代に流行ったクリエーター主導の、
「おもしろいC.I.」も、影を潜めた。
その結果、事情はともかく、そこから、
C.I.を作る人、受け取る人の「人の気配」のようなものが、
消えていったような気がします。

そして、ぼくらCM制作の現場にいる人間からすると、
C.I.は、それ自体独立した、コマーシャルにはなじみにくい、
強烈なものになっていきました。
たった2秒や3秒の中に、抱えきれないくらいの荷物を背負っている。
いつ頃からか、C.I.は、そういう存在になっていました。


(2009年05月14日)

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