北海道のみなさん、こんにちは。
ぼくらの業界で、みんながC.I.
(コーポレート・アイデンティーティー、略してC.I.)
と呼んでいるものがあります。
お聞きになったことがありますか?
その言葉は、ご存じなくても、テレビCMの最後に、
印象に残るサウンドと共に、その企業の名前が入るのは、
ご記憶にあるでしょう?
そう、ソニー、パナソニック、味の素、キリン、
TOYOTA、NISSAN・・・
ジャンルを問わず、多くの大企業のコマーシャルには、
その企業の名前や、スローガンが、ほんの1秒〜3秒の間に、
タイポグラフィーと音で、デザインされています。
ひと昔前なら、カネボウが「For Beautiful Human Life」
と言っていましたし、
TOYOTAなら「Fun To Drive」、
積水ハウスは、長年♪セキス〜イハウス〜という
サウンドロゴとタイトルを使っています。
めずらしいところでは、長年C.I.を導入せず、
作品本位のCMを作ってきたサントリーが、
「水と生きる」という企業スローガンを導入したことがありました。
この、CMにC.I.をつけるということ、
外国のCMにないわけではありませんが、
こんなにも数多く流れている国は、めずらしいようです。
カンヌ映画祭のCMフェスティバルで、
日本から出品されるCMに、あまりにもC.I.が多いので、
それだけでブーイングが起った、という話を聞いたことがあります。
でも、C.I.って、なんのために?
もちろん、企業の認知度を高めるために。
たくさんのCMを打っている企業だと、
それだけ数多く企業名をC.I.で印象づけることができます。
また、ばらばらな商品、個々のCMにも、
その企業のC.I.を付けることで、イメージの統一感と信頼感が増します。
それによって生まれるのが、アイデンティティー、
そしてブランド効果というわけです。
何にでも、最初があります。
あたり前のように、いまテレビで盛んに見るサウンド付きのC.I.を、
最初に始めた企業って、どこなんだろう?
みなさんは、後ろ向きのエンゼルが振り返るアニメに、
♪ピポピポというサウンドがついた、
森永製菓のCMは覚えていらっしゃいますか?
あそらく、あれが最初だったのではないか?と言う人がいます。
ぼくも、長年仕事をさせていただいている
ONアソシエイツというCM音楽制作会社の大森昭男さんです。
1960年代からCM音楽を制作していらっしゃる大ベテラン。
その大森さんが、「このアニメーションに音楽を付けて欲しい」
と依頼され、♪モリナガと歌うべきところを、
それをイメージさせるリコーダーの音だけにしたのだと聞きました。
1970年代の話、作曲は、クニ・カワチさんだったと思います。
この、あえて企業名を歌わないところに、
森永製菓のC.I.には、アイデアがありました。
実は、ぼくも、一度だけC.I.の「演出」をしたことがあります。
1986あたりでしょうか?
当時ぼくがいた、サン・アドという会社に、
SONYのC.I.のアイデアを考えて欲しいという依頼があり、
ぼくが担当して考えたのが、黒バックに白文字でSONYが、
瞬きするような一瞬の動きと共に現れる。
ピッ、というサウンドが一音ついただけのものでした。
デザイナーの葛西薫さんと共に、「スマートで、品格のあること」
を目指して考えたのだと記憶しています。
つまり、それが、ぼくらが考える「ソニーらしさ」だったのです。
そして、ぼくは演出家ですから、どんなCMに付いても、
目立ち過ぎないこと、できるだけ短いことを心がけました。
でも、いま考えると、よくそんなものが通ったものだと、
不思議に思います。
その頃から、C.I.は流行のピークを迎えます。
どんどん強く、どんどん目立つように、
とクライアントが考えはじめたから。
C.I.は、自然とクリエーターの手を離れ、クライアント主導で、
広告代理店によって、作られて行くようになりました。
そうなると、もうC.I.がひとり歩きしはじめます。
CGブームも手伝って、派手なアニメーションや強烈な音で、
とにかく目立つこと、印象に残ること、
つまりそれ自体の完成度が求められるようになったのです。
広告代理店を中心に、何パターンも作られる中から選ばれたC.I.が、
ぼくらの手に渡る。
もちろんそれは、ぼくらが手を出せない「聖域」。
そして、世の中は15秒CM中心に動くようになっていました。
15秒のCMに、2秒や1.5秒のC.I.が付く。
ということは、正確には、13秒でCMを完結させなければならない。
たとえそれが、どんなに静かなCMであっても、
最後には、強烈な画と音のC.I.を付けなければいけない。
そんなことが、ぼくら制作者にとっての日常になっていました。
(次回に、続きます。)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第77回 C.I.って知っていますか?①
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