なるほど情報ウェブマガジン【週刊コラナビ北海道】毎週木曜日更新

週刊コラナビトップディレクターズ・カット

ディレクターズ・カット

第76回 時代と共に変わるCMの長さ

北海道のみなさん、こんにちは。

みなさん、CM、ちゃんと見ていますか?
テレビを、あまり見なくなったって!?
ほんとうに、よくそういう話を聞きますよ。
企業のサイトで?YouTubeで?
若い人ほど、そうらしいです。
ところで、みなさんがテレビで見ているCMの長さって、
ご存知でしたか?
最近、気になったCMをちょっと思い返してみてください。
最近じゃなくて、こどもの頃好きだったCMを
思い返してみてください。
さらに、景気が良かった頃のCMを思い出してみるというのも、
おもしろいかも?

最後の質問の答えは、15秒です。
ぼくのこどもの頃には、15秒CMというのは、
ほとんど存在していませんでした。
それが、1970年代後半になって、確か、
外資系クライアントが15秒CMをやりだして、
徐々に広がって行った、と聞いたことがあります。
景気の良かった時代、バブルの頃に、
15秒CMは絶頂期を迎えます。
広告代理店や、テレビ局側にとっては、
15秒CMを数多く売った方が儲かる、
という事情もありました。

かつての、サントリーや資生堂の名作CMを、
最近になって見る機会があると、驚きます。
そのほとんどが、妙に長く、ゆったりとしています。
そう、60秒CMが圧倒的に多かったのです。
昭和20年代、30年代生まれの人が、
こどもの頃好きだったCMを思い起こすとすれば、
それは60秒だった可能性が高いと思います。
いまでも覚えているCMソングがあったら、
ちょっと秒数を気にしながら歌ってみてください。
どうです?おそらく30秒くらいあるでしょう?
盛んにオンエアーされたスポットCMでも、30秒が主流でした。

でも、5秒CMってのがあったのを、ご存知ですか?
「なんである?アイデアル。」
古くて、恐縮です。
植木等が出ていた、昭和30年代の、
アイデアルという商品名の、折り畳み傘のCMは、
たったの5秒でした。
まさに、その長さにアイデアのあるCMでした。

ぼくがCM業界に入って間もない、
1970年代後半や80年代最初の頃に、
3分CMというのが、ちょっと流行りました。
資生堂や当時勢いのあった西武百貨店などが、
一社提供の特別番組を制作した時に作った、スペシャルCMです。
普段CMをあまりやらない映画監督などが作って、
当時の広告賞を総なめした、傑作、名作も生まれました。

3分は特別だとしても、CMディレクターになったら、
どうしてもやってみたかったものに、
セイコー一社提供の大晦日番組、
「ゆく年来る年」のCMがありました。
これは、1分CM。
1分で、時間の長さや、大切さ、かけがえのなさを語る。
年末が近づいてくると、広告代理店各社の精鋭プランナーたちが、
CMを勝ち取るべく、こぞって競合しました。
そして、売れっ子ディレクターが、それを演出する。
ぼくにも、独立した年に、そのチャンスが巡ってきました。
いまでも、その時のうれしさを、はっきりと覚えています。
(若いOLの女性が、ストップウォッチを持って、
朝、会社の階段を駆け上がる、というCMでした。)

90年代くらいになると、「今回は15秒CMしかない」とか
「15秒CMがメインだ」とはっきり言われることが
増えてきました。
番組の提供枠ではなく、スポットで、CMを大量に投下する
などという場合は、15秒CMが圧倒的に多くなりました。

最近になって、再び、15秒しかない、
というケースがたびたびあるようになりましたが、
今度は、事情が逆。
番組を提供したり、30秒CMを作ったりする余裕が、
企業になくなったから。
15秒CMを、かつての感覚で言えば「細々と」オンエアーする。
そんなCMが、増えてきているようです。

でも、ぼく自身が、ここ数年手がけたものを振り返ってみると、
明らかにCMの長さは、流動化している気がします。
1分、ときには90秒などという長さのCMを作ることが、
とても増えてきています。
クライアントのオーダーは、30秒CMでも、
あえて60秒の長さを作って、ウェブで流す。
15CMしか作らない場合なら、30秒CMを作る。
最初から60秒CMを、というオーダーも少なくありません。
特別番組や(24時間テレビや、イベント的なスポーツ番組など)、
そのクライアントの提供番組で、
あえて1分CMを流すという傾向が、再び増えてきました。
ウェブで人の目に触れるCMを無視できなくなってから、
明らかにCMの長さに対する感覚が変化してきています。


現場にいる者の感覚からいうと、
長尺CM(1分以上のCMをこう呼びます)を作ると、
盛り上がるんです。
作るぼくらも、クライアントも、盛り上がる。
この長さがあると、やっぱりいいよね。
言いたいことが言える。見応えがある。
しみじみする。企業の好感度が上がる。
制作者とクライアントの気持ちが、ひとつになる気がします。
不思議です。
15秒CMを作っているときの、
音が小さいだの、タイトルをもっと大きくだの、
もっと刺激的なコピーを、などという殺気立った雰囲気が、
スーッと消えてなくなる気がします。

さて、そんな時代にCMを見て育つ子どもたちの、
記憶に残るCMの長さは、一体、どういうものなのでしょうか?
まだ、ぼくにも予測がつきません。
でも、単に勢いや、目立つことだけでなく、
こどもにいい影響を与えるような、将来「いいCMだったなぁ」
と振り返ってもらえるCMを作るには、
ある意味、おもしろい時代になったと言えるかもしれません。
CMの長さの流動化。
15秒一辺倒の時代の終焉。
それは、歓迎すべき傾向だという気がしています。
人の記憶に残ってこそ、CMは「文化」になるのですから。


(2009年04月23日)

コメント(2)

感慨深く読ませていただきました。

確かに記憶に残るCMは長かった気がします。
15秒のCMは今では当たり前なのかもしれませんが、よくよく考えると短い限られた時間の中でその会社なり商品の特徴を印象付けさせられる事は、言葉が悪いかもしれませんが「暴力的」なのかもしれません。

アメリカの「ナイキ」や「PEPSI」のコマーシャルなんかは長くてもついつい凝視してしまいます。
ストーリ-構築技術や撮影技術の高さに関しては日本は引けを取らないレベルを持っているとは思うのですが、出演するアーティストや更には製作コストが我が国とは一線を引いているのでしょうか。

ブリトニーとビヨンセが「We will rock you」を歌っていたPEPSIのコマーシャル、好きだったなぁ。

Anonymousさん、
コメントへのレスポンスが、遅くなってスミマセン。

15秒CMであっても、
それにふさわしいアイデアがあればいい。
それだけのことだと思うんです。
でも、大半は、本来30秒は欲しいという情報量を、
15秒であることを計算していないアイデアの中に
盛り込むCMが圧倒的に多い。
そして、60秒CMには、ごまかしのきかない技術が求められます。
15秒しか経験のない、今日の日本のCMクリエーターや
撮影スタッフの実力が、果たして、いかほどのものか。
実は、かなり深刻な状況だと思っています。

Anonymousさんがお好きだと言うアメリカのCMは、
日本のそれとは桁違いの予算をかけて制作されています。
日頃鍛えている筋肉が、違ってきます。
いまや、15秒CMにしがみついている場合ではないことは、
自明ではないかと思っています。

コメントする


画像の中に見える文字を入力してください。

(画像が表示されない場合、画像のところでマウス右クリック-[画像の表示]を実行してみてください[Windows InternetExplorer, FireFoxの場合])

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第76回 時代と共に変わるCMの長さ

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1707