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第75回 混じりっけのないCM、できました。

北海道のみなさん、こんにちは。

以前ここで、「オフ・コマーシャルという実験」というタイトルで
紹介させていただいたCMを、
つい先日、やっとぼくのブログで公開することができました。
今日の「編集人コラム」でも、
さっそく編集長の渡邊さんが取り上げてくださっています。
過分な評価をいただき、うれしい限りです。
(たとえウェブ上のお付き合いであっても、
持つべきものは友人ですね。)

ブログでも紹介していますが、今週のはじめには、
できあがったCMを持って北九州まで行き、試写会をしてきました。
今回のコマーシャルは、石けん作りの様子を、
ドキュメンタリー風に、ただ撮っているだけのもの。
試写会に参加してくださったシャボン玉石けんの
みなさんにとっては、見慣れた風景に過ぎません。
たいしたアイデアも、CMとしての「ひねり」も、
音楽やナレーションの「強さ」も、ありません。
それを、どう受け止めていただけるのか、
正直言って、とても不安でした。

ところが、そんなぼくの不安をよそに、
「こんな風に感じてもらえたらいいな」という、
このCMに込めたぼくの思いが、ストレートに伝わった。
そう感じさせる、制作者としてはとても感動的な試写会になりました。

日頃のCM作りで、ぼくらは、どうやら
「感じる力」を過小評価してしまっているようです。
これは伝わらないだろう、とか、これはわかりにくい。
そんな理由で、作り手としてほんとうに表現したいことをねじ曲げ、
実力やこだわりを出し切りきることなく、CMを作ってしまう。
そういう、受け手の「感じる力」を信じない表現が
横行している気がします。
人の評価や、CMとしての効果を気にするあまり、
作り手の「感じる力」を、十分に働かせていない気がします。
それが、いまの広告作りの現状です。
でも、感じたことをストレートに表現すれば、
クライアントや視聴者のことを気にするような
「混じりっけ」さえなければ、
それがどんなに地味でも、個人的な思いや好みであっても、
ちゃんと伝わるのだ。
「感じる力」を、もっと信じていい。
あらためて、そう思わせてくれる試写会でした。

広告をする上で、とても大切で、単純なことが、
ひとつ、忘れられています。

その企業が好きか。
自分の会社が好きか。
その商品を、自分で欲しいと思うか。
使いたいと思うか。愛せるか。

仕事だから、そうはいかない。
好きじゃなくても、欲しいとか、使いたいと思わなくても、
作ったり、売ったり、宣伝したりしなければならない。
それが、多くの人の、いまある「現実」です。
でも、その、商品や企業のことを、
思ったり、信じたり、愛したりする力が、
弱っていればいる分だけ、広告の伝わる力だって弱くなる。

試写会で、あるベテラン技術者の方が、大声で言いました。
「おれの人生そのものだ!」と。
CMに写っているのは、ただまじめに
石けん作りをする人たちの姿だけなのです。
それを見て、「人生そのもの」と言い切れる人の、
なんと幸福なことでしょう!

試写会が終わった後で、
社長と親しくお話しさせていただいた中に、
こんな話がありました。
「うちの会社ほど、社員の、自社製品使用率が
高い会社はないでしょうね。自分の会社で作った石けん
以外のものを使っている人は、まず、いません。
会社を辞めた人でさえ、ずっと使い続けているようです。」
すごい会社があるものです。
何気ない話ですが、まるで、
無農薬野菜を作る農家の人のような話です。
自分の体に関わることだから、
自分で安心して使えないものなど作れない。
多くの農家の人がそうであるように、
それがわかっているのと、実行するのとでは、雲泥の差です。

日頃、なかなか混じりっけのない仕事などできませんが、
その大切さを思い起こさせてくれたこと。
そして何より、そんな会社のためのCMを作れたことを、
ほんとうにうれしく思います。
今回に限っては、混じりっけのない、
その商品を信じ、CMを作りたいという気持ちだけの、
無添加なCMができたのではないかと思っています。


(2009年04月16日)

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