北海道のみなさん、こんにちは。
90年代中頃のある年、急に仕事のキャンセルが続いたことがありました。
あと数日後に撮影を控えた某大手電機メーカーの企業CMが(いま思えば、地球温暖化がテーマの時代を先取りした企画でしたが)社内の意見統一を図れず、中止になり、一週間後にイタリア・ロケ出発を控えた、シャッターやアルミサッシを作る住宅周辺機器メーカーのCMが、社長の中止命令でキャンセルになり、新作を作る予定だった CMの制作がいくつも先延ばしになって、一年前に作ったものが、またオンエアーされる。そんなことが立て続けに起った年がありました。それが、世の中の動きとは少し遅れてやって来た、広告業界の バブル崩壊のはじまりでした。
確かに、急に電話が鳴り止んだような気がしたものです。
何ヶ月か、仕事の依頼の電話が極端に減り、「大変な時代になる」と、みんながささやきはじめました。スタジオには空きが目立つようになり、いつもはなかなかスケジュールが取れなかったスタッフがヒマになって、仕事がしやすくなったと言うプロデューサーがいたほどでした。
実際には、バブル景気に踊っていた怪しげな企業が広告を打たなくなったり、法外なギャラを請求していたスタッフがおとなしくなっ たりして、何かが淘汰されただけだった気がします。広告業界全体の売り上げが、そう極端に落ち込んだわけではなかったし、多くの スタッフは、相変わらずの忙しさでした。
が、目に見えてはっきりしたことは、グラフィック広告が少なくなったことでした。優秀なアートディレクターやコピーライターが、みんなテレビCMを中心に企画を考えるようになりました。逆に言えば、テレビCMを視野に入れたダイナミックな広告戦略を発想できない広告マンが、淘汰された、と言えるかもしれません。
今年の夏頃から秋口にかけて、ぼくが関わったいくつかの仕事のキャンセルが続きました。それぞれに、止むを得ない事情があるので、あまり関連づけて考えていなかったのですが、いま振り返ってみると、どこか、あのバブル崩壊の頃に似ている気がします。ぼくらは、いわば下請け仕事。川下にいて、業界で起っていることを、俯瞰するのは難しい。でも、この「キャンセル続き」は、どうやらぼくだけに起ったことではなかったようで、他のスタッフや、編集や撮影スタジオでも、今年後半、例年になく中止やキャンセルになる仕事が多かったと聞いています。
そして、ここに来て、大手広告代理店の大幅な減収が、取りざたされるようになりました。クリエーティブと言えども、もう、クライアントからの広告発注を待っている時代ではなくなったからと、会社から、ビジネスアイデアを求められているという話を、最近、大手代理店のクリエーターから聞きました。ついこの前まで、いっしょにテレビCMの仕事をしていた代理店担当者が、ウェブ、イベント など、もっとCM以外のメディアを視野に入れたクリエーティブを開発 する部署へと配置換えになる。そんな人も、何人か知っています。
やっと、「激動の時代」という言葉が、聞こえるようになりました。広告業界は、いつも、少し、遅れている。時代を先取りしているように見えて、実は、いつも企業の動き待ちです。
CMは終わった。テレビCMは、その社会的な役割を、終えつつあるのではないか。業界の川下にいるぼくが、一昨年の終わりに言ったことです。来年あたり、いよいよいろいろな形で、それがはっきりしてくるような気がします。バブル崩壊の後、グラフィック広告が衰退したように、これから、ポスト・テレビCMの動きが加速するだろうと思っています。
何か、この先のビジョンがあってやりはじめたことでも何でもない のですが、オフ・コマーシャルという実験も、おそらく、遠くない将来、この「激動の時代」、ポスト・テレビCMの流れと無縁でなかったと思う時が来るような気がします。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第62回 オフ・コマーシャルという実験③
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