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第61回 オフ・コマーシャルという実験②

北海道のみなさん、こんにちは。

シャボン玉石けんでは、毎日のように、小中高生をはじめとした、さまざまな人たちが工場見学に訪れます。年間、数万人になる、と聞きました。ぼくも、工場見学やロケハンで、そして撮影中に、工場見学しているグループを、何度となく見かけました。工場見学者がいるのが、この石けん工場の、日常の風景なのです。
ふと、見る度に、案内している人が違うことに気がつきました。専門の案内人がいるのではなく、どういうローテーションになっているのかはわかりませんが、研究室の人や石けん作りの職人が、仕事を中断して、交代で、工場見学の案内を担当しているようです。生産効率第一の工場にあって、なかなか真似のできることではありません。無添加石けんとは、何か。見て、納得してもらう。そのための労は惜しまない。社員は、石けんができる仕組みや、無添加の良さを、ちゃんと説明できるようにしておく。そういう会社の方針が、徹底しているのでしょう。

どんなCMも、この工場見学の説得力にはかなわないな、とぼくは思いました。あたり前のことですが、無添加なのだから、石けんの基本成分以外、何も加えない。天然油脂に、苛性ソーダを加えて、炊くだけ。石けん作りは、実にシンプルな仕事でした。ただし、どんなモノ作りもそうであるように、シンプルであればあるほど、職人の経験と勘がものを言う。石けんで言うなら、水や蒸気の加減、塩を入れて、不純物を分離させるタイミングを計って、いかに油脂と苛性ソーダをうまくくっつかせるかが、すべてなのだそうです。
そして、いちばん驚き、ああ、なるほど!と思ったのは、石けん職人が、製造途中に、チーズフォンデュのような石けんを、ちょっと舐めてみて、舌の感覚や味で、出来具合を確認するところ。
石けんを舐める!
まさに、無添加石けんの安全性と、石けんが職人の手によって作られていることを、象徴する仕草です。

初めての工場見学で、それを知った時、これだな、と思いました。このシーンを撮影できたら、CMになる。無添加を語るのに、余計な表現なんかいらない。工場見学の持っている説得力を、できるだけ損なうことなく、工場見学では踏み込めないところまで踏み込んで撮影できたら、それでいい。

そんなわけで、今回、ぼくが作っているシャボン玉石けんのCMには、企画らしい企画がありません。ただ、ストレートに、石けんを作っているところを写しているだけです。それだけで、どれくらい説得力を持つことができるか。CMの出来不出来は、そこにかかっています。

ぼくらが日常、食べたり、使ったり、見たり、聞いたり、乗ったりするもの。
より強力に、よりおいしく、より美しく、より静かに、より早く。飽くことなく、改良に改良を重ね、次から次へと登場する新商品。テレビCMは、その魅力を伝えようと、さまざまな表現を試みてきました。でも、できあがったものや、美しいパッケージや、イメージではなく、ズバリ、それを作っているところを見せる。堂々とそれができ、しかも、それ自体おもしろいという商品が、いったいどれくらいあるでしょう?
シャボン玉石けんなら、できる。工場見学の説得力にはかなわなくても、見せて、納得させることなら、CMにもできる。石けん作りがシンプルなら、ぼくの発想も、そんな、とてもシンプルなものでした。



(2008年11月27日)

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