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第60回 オフ・コマーシャルという実験①

北海道のみなさん、こんにちは。

ちょうど一週間前、ぼくは北九州市にいました。
若松区という工場の多い地域にある、ある石けん工場で撮影するために。その工場は、無添加石けんで有名な、シャボン石けんの全製品を作るところ。北海道でも、かなり認知度が高いと聞いています。

普通なら、何千万かの制作費があって、広告代理店や制作会社が間に入り、CM撮影があるのですが、その日は、制作費もなければ、広告代理店も何もありません。いや、CMの依頼すら、どこからも受けていない。ぼくが、直接、シャボン玉石けんの社長に「作らせてください」とお願いし、社長の了解をいただいて、制作費ゼロで、「勝手に」撮影に行っただけ。スタッフは、ぼくの他に、カメラマンとその助手、照明の4名。いつもなら、制作会社の人がやる、飛行機や宿の手配、クライアントとの連絡はぼくが、飛行場で借りたレンタカーの運転はカメラマンがやるという、まさに手弁当の撮影でした。
これを、ぼくは「オフ・コマーシャル」と呼んでいます。普通なら、コマーシャルは、テレビでオンエアーするために作られるものですが、それをしない。クライアントやぼくのHPで公開するだけ。普通なら、クライアントが発注するところからCM制作がスタートするのですが、クリエーターの方から、「作ってみたい」と持ちかける。仕事であるまえに、ぼくら制作者が、そのクライアントの姿勢や商品に強く共感していること。クライアントが、CMの作り手としてのぼくらに、共感してくれること。それを、何より大切にしたい。普通、オンの状態で始まることを、いったん、すべてオフにして始めてみる。オンエアーのオンに対して、オフ。そんな意味を込めて、オフ・コマーシャルと呼んでみています。

二年前に急に思い立ってスタートし、東京のDIGAWELという、まだ誕生して間もない小さなブランドのために最初のオフ・コマーシャルを作りました。それを公開してからも、すでに一年半過ぎています。依頼のないところにCMを作るには、偶然の出会いや、お互いの信頼関係、そして何より、ぼくに「作ってみたい」という強いモチベーションが必要です。今回のシャボン玉石けんとの出会いも偶然でした。去年の6月に、北九州にあるTOTOの工場へCM撮影に行った時、北九州市が発行する「雲のうえ」という情報誌で、シャボン玉石けんの工場の取材記事を読みました。その時、直感的に、「ああ、こういうクライアントの商品のためにこそ、オフ・コマーシャルを作ってみたいな」と思ったのです。でも、まずは自分の目で、石けん工場を見なければ、とも思いました。そして、実際に工場見学に行ったのが、今年の6月。そこから、シャボン玉石けんの社長にオフ・コマーシャルのこと、CMを作らせて欲しいことなどをメールで投げかけ、何回かやり取りがあって、やっと「ひしひしと熱意を感じました。今村さんの作るCMを見てみたい」とおっしゃっていただいたのが、一ヶ月ほど前。お金で動くのではない「仕事」は、時間のかかるものなのですね。
でも、こういう「仕事」には、スピードも必要だと思っています。思いつきをカタチにしていくスピード。思いを伝えるスピード。そして、気持ちが冷めないうちに動き出すスピード。シャボン玉石けんの森田社長のOKをいただいてからは、すぐに、いっしょに仕事をしいたいと思ったカメラマンの方に連絡をし、お互いのスケジュールをやりくりして、まず、ロケハンに行きました。カメラマンのm.hasuiさんも「自分が共感できるクライアントかどうか、カメラマンの目で見てみたい」とおっしゃったからです。そして、撮影に行ったのが、ロケハンから一週間たった先週、というわけです。

あ、今回のシャボン玉石けんの撮影のことを書こうと思ったのに、前置きでずいぶん長くなってしまいました。こんなこと、ぼくのブログを読んでくださっている方なら、とうにご承知だろうに。でも、自分でも、もう一度、今回のオフ・コマーシャルに至る流れを振り返ってみたかった。なぜ、オフ・コマーシャルなのか? なぜ、勝手にCMを作る試みが必要なのか? それを何度でも振り返り、確認し、その気持ちを、すべての情報を、オープンにしていくこと。ひとりでも多くの人に、伝わって行くこと。それこそが、できあがったCM以上に大切なことだから。オフ・コマーシャルとは、普通なら、すべて「極秘」で進められる制作プロセスを、どこまでCMを見る人と共有できるかという、実験でもあるのだと思っています。
今日書けなかった、シャボン玉石けんでの撮影の様子などは、また次週。


(2008年11月20日)

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