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第54回 撮影は食にあり⑦ ケータリング対お弁当

北海道のみなさん、こんにちは。

以前なら、海外ロケでしかなかったケータリング。ここ十数年の間に、日本でもずいぶん普及しました。
スタジオでの撮影なら、ランチや夕食に、必ずと言っていいほどケータリングを呼ぶようになりました。もちろん、冷めたお弁当を食べるより、温かいごはんとみそ汁に、好きなだけおかずを取って食べるケータリングの方が、スタッフにも人気です。でも、海外ロケで経験する、ケータリングの楽しさ、強いて言うなら、華やかさのようなものがない。海外のケータリングには、ホテルのビュッフェスタイルや、ピクニックの食事のような、ウキウキする楽しさがあります。それに比べると、日本のケータリングは、うちでたくさんおかずを食べているような、どこか慎ましく、あえて言うなら、貧乏臭い感じがしてしまう。

やっぱり、伝統の力には、適わないな、と思います。欧米のケータリングには、長い歴史があります。一日、三度の食事もさることながら、とにかく一日中、スタッフの食欲を満たそうとする、しつこいくらいのサービス精神があります。朝食の準備ができるまで、待ちきれないスタッフのために、とりあえず、バナナやリンゴ、甘い菓子パンなどが並びます。三度の食事の間には、チョコレートやクッキー、ナッツ、アメリカならグミやゼリービーンズなどが、常時テーブルの上にあります。午後の夕食前や、撮影が深夜になったら、サンドイッチや焼きたてのピザ、カットしたフルーツやクッキーなどの、仕事の合間に手で取れる、いわゆるフィンガーフードをトレイに並べて、スタッフの間を回ってくれたりもします。

この違いは、どこから来るのか。
言うまでもなく、日本には、お弁当の文化があります。それに、もともと、仕事中に間食することを良しとしない風習もあります。確かに、温かいケータルイングはいいけれど、よく考えられ、ていねいに作られたお弁当の方が、よほどおいしいと思うことがあります。そう、日本には、世界に誇れるお弁当文化があって、それに関しては、どこの国にも負けないと思うのです。
ケータリングは、制作会社の、食事を手配する若い人たちにとって、強い味方。電話一本で、予算さえ折り合えば、あとはお任せ。お弁当は、案外、難しい。どこのお弁当がおいしいか、しっかり情報を持っていなければいけない。歴史の浅いケータリングに比べたら、選択肢は、とてつもなく広い。お弁当を作ってくれる料理屋を手配するも良し、デパ地下のお弁当や駅弁を買ってくるも良し、あえて老舗の弁当屋(たとえば歌舞伎座前の弁松とか)にしてみるのも悪くない。イタリアンのレストランを開店準備中の人に、洋風弁当のアルバイトをお願いする、という手だってある。要するに、アイデアがいるのです。地方のロケに行けば、気の利いた料亭にお弁当を作ってもらうべく、あれこれ算段するのも、楽しいはず。

仕事中に食べるおやつに関しても、ずいぶん変わりました。日本の撮影現場でも、一日中、切らすことなく、お菓子をテーブルに並べるようになりました。でも、ほぼ100%、コンビニで買ってくるお菓子。フルーツを切ったり、ちょっとピザを焼いて配るというような、サービス精神が、根本的に不足しています。
でも、どうなのかな?
仕事中に、むやみにお菓子を食べるものじゃない、という日本の風習は、見直されてもいい。ダイエット効果もあることだし。それでも、スタッフのお腹を満たしたいなら、何か、アイデアがあってしかるべき。
少ない予算で、ワンパターンのおかずしか作らないケータリングなら、ふたを開けた瞬間、声を上げたくなるようなお弁当の方が、数段楽しいと思う。
要するに、この仕事、食事ひとつとっても、クリエーティブじゃなければならないってことを、人に喜ばれることを常に心がけていなければならないってことを、撮影のスタッフとは、おいしいものを食べてさえいればご機嫌で仕事をする人たちなのだってことを、もう一度、思い起こす必要がありそうです。


(2008年09月18日)

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