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第50回 撮影は、食にあり(3)一番人気、九州ロケ

北海道のみなさん、こんにちは。

ぼくら、撮影のスタッフが、食べ物のことでいちばんワクワクするのは、地方へのロケ。日本国内の2大ロケ地とも言うべき、九州と北海道をはじめとして、ぼくも、過去、実にさまざまなところへ撮影に行きました。

なかでも、スタッフに人気が高いのが、九州。あの狭いエリアの中に、豊かな地方色もあります。ラーメン、もつ鍋、ちゃんこ、九州の食の殿堂、福岡。豆腐、海苔、牛肉、海の幸、何でも来いの佐賀。ふぐに、かれい、関あじ、関さば、魚なら日本一の大分。馬肉に、辛子蓮根の熊本。ちゃんぽん・皿うどんに、からすみ、異国情緒のユニークな食文化、長崎。地鶏やざる豆腐、冷や汁の宮崎。そして鹿児島なら、豚肉やきびなごにさつま揚げ。どこに行っても、魚がうまい。さらに、それぞれ県で特色のあるラーメン、長いお茶文化に支えられた伝統の和菓子を入れたら、九州はまさに食の王国です。

九州ロケともなると、羽田空港に集合した段階から、もうスタッフがニコニコしている気がします。午前中に九州の空港に到着して、ひと仕事したら、昼食。その段階から、「何を食べようか」と盛り上がります。そして、そんなスタッフの食い気を察して、昼飯をどうする、晩飯はどこで何を、と段取りするのが、ロケーション・コーディネーターです。とりわけ、九州で、もっともキャリアが長く、草分けとも言うべき存在のS氏。レパートリーの広さ、キャリアがものを言うコネと顔、スタッフへの気遣いで、右に出る人はいません。そして、何より、本人が食いしん坊ときている。S氏は、コーディネーターになる前は、プロ野球選手だったという、ちょっと変わった経歴の持ち主でもあります。地方遠征で、日本各地を転戦して、うまいものを食べる喜びを、身体で覚えているのだと思います。もちろん、食事の後、夜の街に繰り出す楽しみも・・・。

そんなわけで、九州にロケに行って、空港にスタッフを迎えにきたS氏の顔を見たとたん、ぼくらは、「今度のロケは大丈夫、すべてうまく行きそうだ」という予感がしてきます。ほんとうは、「今度のロケは大丈夫。うまいものが食えそうだ」なんですけど、ね。食い物の力、恐るべし!です。「うまいものを食べさせておけば、スタッフは機嫌よく仕事をするものだ」ということを、S氏が誰よりも、心得ているのでしょう。空港で会って、車に荷物を積んで走り出したとたん、何を食べる、あそこの何がうまいという話になるのですから。そして、あっと言う間に、ぼくらはS氏のマジックにかかって、昼飯が楽しみだ、夜飯までがんばろう!と、仕事に励みます。
「今村さん、大分に、うまかふぐ、食わせるところあるとですよ。ふぐ刺しの醤油に、たっぷりきもを入れよるとです。ヤバかですよ!」と夢中になって話すS氏。いや、だから、運転は、ちゃんと前を向いて。後ろを振り向いて話したら、ヤバかですから。それに、そのふぐの話、もう何度も聞いていますから。ぼくくらいのキャリアになると、さすがに、S氏のレパートリーも見えてきて、少々新鮮さがなくなりつつあるようです・・・。

いくらよくロケに行く、と言っても、ぼくらはたまのこと。九州ロケなど、2年に1回あるか、ないか。食い気たっぷりのスタッフを、毎日のように案内し、多い時には、何班も撮影隊を抱えるロケーション・コーディネーターという仕事。食事の世話も、なかなか大変なのだと思います。食い物には目がない。我こそ食通と思っているクセのあるカメラマンやディレクター。その上、予算には限りがあり、時には、数十人入れるところでなければならないのですから。


(2008年08月21日)

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