なるほど情報ウェブマガジン【週刊コラナビ北海道】毎週木曜日更新

週刊コラナビトップディレクターズ・カット

ディレクターズ・カット

第49回 撮影は食にあり(2)ブルーカラーの職場

北海道のみなさん、こんにちは。

CM業界に入って間もない頃、たまたま知り合ったフランス人に、自分の仕事を告げると、「そうか、君はブルーカラーか」、と言われて、ちょっとショックを受けたことがありました。時代の最先端を行く、クリエーティブな仕事、頭を使う仕事と思っていたから。
でも、ぼくの入った職場は、広告代理店じゃなく、制作プロダクション。頭やセンスを働かせているのは、企画や演出の打ち合わせまで。いざ撮影となれば、そこは「現場」です。セットを作る、大道具さん。庭や気の植え込みを作る造園さん。クレーンや撮影用移動車を動かす特機さん。まるで、工事現場みたいです。そして、何よりもまず、重い機材を動かすことが仕事のカメラマンのアシスタントや、照明部の助手さんがいます。みんな、すぐにお腹が減る若者たち。あまり身体を動かさないのは、ディレクターやプロデューサー、カメラマン、照明技師くらいのもの(もちろん、クライアントや広告代理店担当者も)で、まさに肉体労働者の集まりそのものなのです。入りたてのプロダクションマネージャーなんて、「スタッフに何か言われたら、まず走れ」、と最初に教えられる仕事。そう、ぼくは確かにブルーカラーでした。少なくても、プロダクションマネージャーの仕事をしていた数年間は。

ぼくが制作進行の仕事をしはじめて、2本目の仕事で。
ぼくの手配した弁当をスタッフが食べ始めました。では、ぼくも。と、椅子に腰掛けたとたん、プロデューサーが、ぼくの椅子を蹴り上げました。「何やっているんだ!」とどなりながら。スタッフ全員に、ちゃんとお弁当が行き渡ったことを確認してから、いちばん最後に弁当を食べろ。そう言われたのです。

注文する弁当の数は、撮影の規模にもよりますが、すぐに40や50にはなります。あまらないように、その数を把握するのは、案外たいへん。数え間違えて、足りなかったときのブーイングは、すさまじいものがありました。とりわけ、照明部の助手さんたち。肉体を使う度合いが増せば増すほど、「メシへのこだわり」が強くなる。いいタイミングで、不足のないように、十分な量で、できれば温かいものを(たとえば弁当にみそ汁を付けるとかして)。もちろん、おいしいに越したことはないけれど、それが最優先じゃない。2、3本の現場を経験するうちに、それがかわりました。そして、アシスタントの身分なら、とにかく早く食べること。メシ時に、いろいろ用事を言われて動いているうちに、食べ損ねてしまうことだってよくあるのです。そんなことにならないように、食べるタイミングを見失わずに、短時間で食べる。肉体労働者の、鉄則です。
当時は、深夜や明け方まで、撮影が及ぶことも、よくありました。いや、その方が多かったくらい。CGや、画面の修正、合成処理などということが、まだなかった時代です。時間がかかって当然です。深夜に、食事を用意しなければならなくなることもあります。深夜営業している弁当屋とか、コンビニなど、まだ当時はありません。よく買いに走ったのが、マクドナルドか、牛丼の吉野家。何十個と、ハンバーガーを買って帰ってきたら、「おまえは芸がないなぁ。この前、他の制作会社のヤツが、ラーメン屋の屋台をスタジオまで呼んできたぞ」と、照明部の親方に言われました。どこそこの、だれが、深夜に気の利いた食事をいかに手配したか。そんな武勇伝が、よく語られた時代でした。

撮影という仕事に、食は、なくてはならないもの。味良し、タイミング良しの食があるところは、気分のいい撮影現場になる。早い話、うまいものを食べさせておけば、スタッフは、黙って、機嫌よく仕事するものなのだ。撮影現場とは、そういうもの。そう、ぼくらはブルーカラーなのだから。
ほんの数ヶ月の間に、ぼくはそのことを、身にしみて覚えました。


(2008年08月07日)

コメント(4)

すばらしいCMの裏には、多くのスタッフ苦労があると言うことですよね・・・。どんな業種でも、裏方で働いていらっしゃるかたたちがあってこそ成り立っているということを忘れてはいけないですね。
いろいろな経験をされていたことが、現在今村さんがすばらしいCMを制作される源になっているんでしょうね。
これからも頑張ってください!

医者業も体力勝負とされる部分が少なくなく
立派なブルーカラーであります。
理数系でも文系でもなく、体育会系であります。

その昔、代理店にいた頃、
自分はホワイトカラーだと思っていたのですが、
当時の彼女曰く「え?ホワイトカラーってもっと一流会社の人のことなんじゃないの?」
キビシー…。

カタヒラさん、本当にそうです。
裏方で働く人あってこそ。どんなモノ作りの現場もいっしょ。
これを書きながら、ぼくもそのこと(忘れかけていたこと)を思い出しています。

Mutouさん、医者業も、確かに、身体、体力勝負みたいなところ、あるんでしょうね。
医者が、心身ともに健康じゃなかったら、仕事にならない気もします。

watanabeさん、自分の仕事、現実はブルーカラーなのに、ホワイトカラーと思っている人、案外多いかもしれませんね。

コメントする


画像の中に見える文字を入力してください。

(画像が表示されない場合、画像のところでマウス右クリック-[画像の表示]を実行してみてください[Windows InternetExplorer, FireFoxの場合])

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第49回 撮影は食にあり(2)ブルーカラーの職場

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1282