北海道のみなさん、こんにちは。
前回お話しした、「最初から予想していたクレーム」とは対照的に、思いもよらないクレームで、CMがオンエアー中止に追い込まれる、あるいは、改訂してオンエアーするというというケースがあります。
1996年に発売になった、「大地と水の恵み」という名前のビールを覚えていらっしゃるでしょうか?
その新発売CMを、企画から担当することになったぼくは、いま考えてもなかなかおもしろいアイデアを思いつきました。
主人公は、都会を離れて田舎暮らしをはじめるようになった、男女三人組。木の上に「ツリー・ハウス」を作って、そこでビールを味わったり、ペットに子豚を飼ったり、となりのおじさんに採れたてのタケノコをもらって、そのお礼にビールをあげたり、農業を始めたり、慣れない手つきで鋤や鍬を振った後、土手に座ってビールとおにぎりでひと休みしたり。彼らの、そんな暮らしぶりや、ビールを飲むシーンを描くCM。
どうです?「癒し」なんて言葉がささやかれ始めた当時、まさに時代を先取りした企画だったと、ぼくはいまでも思っているのですが。
さて、その第一弾CMが完成して、オンエアーが始まりました。
ツリー・ハウスの上で、ビールを飲む若者たちを題材に、なかなか気持ちのいい出来上がりでした。


♪ああ、父よ、母よ、やすらぎよ。
ああ、美しい大地よ、水の恵みよ。
演歌歌手、山本譲二が歌うCMソングも、話題を呼びそうでした。
同じシチュエーションで、新聞広告や車内吊りも大量に露出しました。
ところが・・・。
木の上に、家を造ること。
そのために、木に釘を打ち込むこと。
そんなことが許されるのか!?というクレームが、クライアントに寄せられました。それも数十件、かなりの量でした。
そして、即刻、オンエアー中止が決まりました。次に流す予定だったCMに入れ替えたり、急遽、別の設定でCMを撮り直したりと、しばらく、制作関係者はその対応に追われました。
クレームが寄せられたのは、主に、近畿地方以西の地域から、それも九州からのものが多かったと、その後聞きました。なぜなら、その地域こそ、日本古来の木にまつわる信仰が深いのだそうです。それが大木であればあるほど、樹齢の古い木であればあるほど、信仰の対象になるようです。確かに、その地域には、御神木というものが数多くあります。
木に打ち込んだ釘、大木の上に作られた家が、そんな人たちの神経を逆撫でしてしまったようでした。
もしかしたら、北海道のみなさんなら、なぜいけないの?と思われるかもしれません。ぼくがそうであったように。
実を言うと、作り手としては、これほどおもしろい設定のCMは、そうそうあるものではありません。
撮影したニュージーランドでは、日本からのスタッフと、オーストラリアとニュージーランドのスタッフが一丸となって、まさに子どもに帰ったように楽しんで、そのツリー・ハウスを作っていました。
そして、実際出来上がったツリー・ハウスの、気持ちのよかったこと!忘れられない体験でした。
明から、一転して、暗へ。
相手が無邪気に楽しんでいればいるほど、それを快く思わないひとの神経を刺激してしまう。クレームとは、そういうもののようです。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第41回 クレーム社会のCM(3)オンエアー中止になったCM
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