北海道のみなさん、こんにちは。
もうずいぶん前(1991年)のことですが、撮影する前から、クレームを予想していた仕事があります。
このシーンを見て、ピンと来る方もいらっしゃるかもしれません。

桃井かおりさんが、カメラに向かってこんな台詞をしゃべった、チョコラBB(エーザイ)のCMです。
世の中、バカが多くて、困りません?
このCM、予想通り?クレームが入り、たった3日で打ち切りになりました。
そして、あらかじめ用意していたこのバージョンに切り替わったのです。
世の中、おりこうが多くて、困りません?
クレーム、と言っても、「3件、抗議の電話があった」と、広告代理店の担当営業の人から聞いた記憶があります。
たったの3件です。そして、オンエアーしたのは、3日間。それでも、社会面に小さな新聞記事が載り、よほど言葉のインパクトが強かったのか、多くの人の記憶に残るCMだったようです。
このコピーを書いたのは、仲畑貴志さん。
「バカが多くて」なんて、視聴者(クライアントにとっては、潜在的なお客さん)に向かって、言っていいものか?
当然、クライアントからも、事前に危惧する声が上がったと思います。
それに対する仲畑さんの答えは、「一応、こういうバージョンも押さえておきましょう」だったのです。
その切り返しは、見事、と言う他ありません。
案の定、「バカ」という言葉にネガティブな反応をする人がいて、ある意味、予定通りの展開になったわけですが、だれもそれを喜んだわけではありません。あまりの反応の早さと、それに対するクライアントの過敏さに驚きました。しかとして、もう少しオンエアーしていたらいいのに。クライアントとは、何とクレームに弱いものか。残念でならない、と言うのが、当事者だったぼくの偽らざる気持ちでした。
仲畑貴志さん、と言えば、誇張抜きで、日本の広告界の中でも、もっとも数多く、人々の記憶に残る言葉(コピー)を書いてきた人です。
いろんな命が生きているんだなぁ。
元気で、みんな元気で、とりあえず元気で。
というナレーションが流れる、サントリー・トリスのCM「雨と子犬」篇を知らない人は、ある程度の年代ならいないかもしれません。
その仲畑さんの言葉に、「広告は、喧嘩だ」というのがあります。
もっとも、大声を張り上げ、相手に強くものを言うのだけが喧嘩ではありません。時には小声で、時にはやさしく、ときには笑みさえ浮かべながら。とにかく、相手を黙らせる。それが、喧嘩巧者というもの。
そんな仲畑さんの書くコピーには、インパクトの強さの裏側に、なんとも言えないやさしさ、人間の弱さや寂しさ、そして本音が見え隠れします。
「バカが多くて、困りません?」と言われて、腹を立ててしまった人が、もしいたとするなら、仲畑さんの挑発に思わず乗って、喧嘩を買ってしまったことになるのかもしれません。
バカだなぁ(笑)。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第40回 クレーム社会のCM(2)たった3日間のCM
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