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第33回 海外と日本、映像のトーンの違い

北海道のみなさん、こんにちは。

イタリア・ロケから帰ってきて、さっそく編集室に入って、仕上げの作業がスタートしました。
イタリアでは、ローマからミラノに移動してフィルムを現像し、トーンを調整しながらフィルムからビデオに収録する作業(これをテレシネと言います)をしてきました。
それにしても、毎回、日本でするテレシネと、海外でするテレシネとの違いに、驚かされます。映像は、光なくして写すことができません。その光に対する感覚が、どうやら、大きく異なるようなのです。
今日は、その感覚の違いについてお話ししてみたいと思います。

フィルムからビデオに収録する、と言っても、ただ収録するだけの作業ではありません。カメラマン(前回お話ししたように海外ではDPと言います)と一緒に、撮影したフィルムをテレビ画面で見ながら、どのような調子にして行くか、意見を交わします。そこには、その意見を聞きながら、コントロールパネルを操作してトーンの調整をする、カラリストという技術者がいます。
調整できるトーンの幅は大変広く、優秀なカラリストでなければ、せっかくのフィルムも台無しになってしまいます。
たとえば、片言の英語や、通訳を交えながら、「ここはもう少し明るく」とか、「もっと青みがかった調子がいい」、などとぼくがDPに注文を出すと、カラリストが、DPと相談しながら、自分の技術と想像力をも駆使して、ネライのトーンに近づけて行ってくれる、という具合に。

もちろん、納得行くまでテレシネして、それなりに満足して帰ってくるのですが、たいていの場合、日本の編集室でそれを見直すと、愕然とします。
それが、何であれ、とても極端なトーンに上がっている場合が多いから。
暗い画面は、極端に暗く、コントラストが強い画面は、極端にコントラストが強い。赤みがかった画面は、極端に赤く、青みがかったトーンは、極端に青くなる。なにもかも、極端に振れているのです。

気になって、もう一度、日本のスタジオに入り直して、テレシネしてみることもあります。そうすると、今度は、元は同じフィルムなのに、こうも違うか、というトーンに仕上がります。海外でテレシネした時の、何であれ極端な部分が失われ、なんとも柔らかい調子になるのです。
海外(欧米とオセアニア)でテレシネした時には、光のいちばん強いところと、弱いところとが強調されるのに比べて、日本でテレシネした時には、暗くも明るくもない、中間の、光のやわらかい部分が強調される傾向にあります。その結果、海外でテレシネした時の、力強さが、失われてしまうのです。

これはもう、光の文化の違い、としか言いようがありません。
明暗のコントラストを力強く表現する、欧米の光の文化。
光の中間のトーンを大切にする、日本の光の文化。
前者は、シャンデリアの輝きを、後者は障子越しの光を思い浮かべていただけたらわかっていただけるかもしれません。
もうシャンデリアも、障子もない生活をしているにもかかわらず、幼い頃から生活環境のなかで育まれた感覚というものは、なんとも根強いものがあるのですね。

ちなみに、映像のトーンを調整する職業であるカラリストは、日本より欧米に、優れた人が多いと言われています。
何でも極端を嫌う日本人。中間のトーンを大切にする日本人。
極端にネライを表現する欧米人。強く、幅のあるトーンを大切にする欧米人。
どちらに、映像のトーンを調整する技量が、より発揮できるかは、言うまでもありませんね。

ローマ、サンタンジェロ橋 撮影中


ローマ、サンタンジェロ橋 撮影後
ローマ、サンタンジェロ橋にて。
撮影準備風景と、撮影が終わった直後に。
右奥に見えるのは、バチカン、サン・ピエトロ寺院。



(2008年03月06日)

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