北海道のみなさん、こんにちは。
いまぼくはミラノにいて(現地時間27日午前9時)、この原稿を書いています。
21日に東京を発ち、ローマで2日間CM撮影をし、昨日はミラノ に入ってテレシネ(現像済みのフィルムをトーンの調整をしながらビデオに入れていく作業)をしました。
そして、あと数時間したら、東京に戻るフライトに乗ります。
今回は、あるクレジット会社のためのCM。
日本からは、CMディレクターとしてぼく、某有名女優、その夫役にオーディションして決めた男性タレント、スタイリスト、ヘアーメイク、日本の制作会社のプロデューサーとプロダクション・マネージャー、広告代理店のクリエーティブ・スタッフやクライアントの担当者など、総勢13名でイタリアに来ました。
その他の、カメラマンや照明をはじめとする、直接撮影に関わるスタッフは、すべて現地、イタリア人スタッフです。
今日は、日本と海外(主にヨーロッパ)の撮影スタッフの違いについて、お話ししてみることにしましょう。
フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、最近撮影の増えているチェコなど、どこの国に行っても、ほとんどスタッフが大変流暢な英語を話します。
カメラマンともなると、いつ、どの国から仕事のオファーがくるかわからないので、英語を話せて当然と言えば当然なのですが。
それに比べて、日本のスタッフの英語力は惨憺たるものがあります。
(ちなみに、ぼくは多少の英語を話しますが、それで仕事ができるというほどではありません。)
日本以外の、ほとんどすべての国で、カメラマンはDP(Director of Photography)と呼ばれ、撮影に関するほとんどすべてを取り仕切る、マエストロ(棟梁)的存在。それに対して、日本では、カメラマンを基本的にDPと呼ぶことはなく、いちばん大きな違いは、照明は照明技師に任せるというスタンスをとることです。
そして、もうひとつ興味深い違いは、海外の撮影クルーには、カメラ・アシスタントやフォーカスを送ることだけを専門とするベテランのスタッフ(カメラマンよりキャリアがあることも多い)がいること。今回のイタリア人DPに至っては、カメラをのぞいたり動かしたりすることさえ、自分ではせず、カメラ・オペレーターに任せていました。
それに対して、日本では、フォーカスを送ることやフィルムを交換することを含め、機材周りのことはすべて、将来カメラマンとして独立することを夢見る若いアシスタントがやります。
そして、毎回海外の撮影スタッフと仕事して思うことなのですが、彼らは大変にタフです。
寒さに強く、力仕事に向く体つきということもありますが、とにかく精神的にタフ。なぜなら、現場はDPがすべてを取り仕切るので、彼の指示が絶対。そのDPは、監督が何を望んでいるかに意識を集中させていて、そのために技術を提供するという姿勢が明快なのです。
日本人スタッフは、どちらかと言えば、横並びの仲間意識が強く、それぞれが自分のイメージを強く持って仕事をするので、監督がそれと違うことを言い出すとか、CMだからクライアントや代理店の人の意見が入ることもあって、そんな時の対応能力は、あまり高くない気がします。
監督であるぼくにとって、自分のイメージやCMで伝えたいことが明快である限り、海外スタッフほど心強い味方はいません。そして、技術的にも、はっきり言って日本より数段優れていると思います。ただ、繊細でデリケートな表現、ニュアンスを大切にする映像を撮りたいときには、やっぱり日本のスタッフには敵いません。
と言っても、それは一般論。
言葉など伝わらなくても、映像産業の歴史的な仕組みの違いはあっても、演出家が描くコンテから、態度から、表情から、瞬時に、何を望んでいるかがわかる。ぼくからすれば、撮影が始まればあっという間に、カメラマンはじめ、そのスタッフの持っている色合いがわかる。ぼくらには、そんな映像言語とも言うべきものがある気がします。
そして、どこの国であっても、優れたスタッフとは、何とも言えない優しさや、相手が何を望んでいるかを知りたがる思いやりのある人であり、時に、自分の好みを捨てる勇気もあれば、どこまで行っても、彼らしさを捨てない頑固さもある人のことなのだと思うのです。
今回ローマで撮影したCMは、6月頃からテレビで流れる予定です。
その時は、またここでお知らせしようと思います。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第32回 海外と日本、撮影スタッフの違い
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