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第29回 最近のCM制作事情(2)厳しいCM制作費

北海道のみなさん、こんにちは。

最近のCM事情をめぐるお話の二回目は、きびしいCM制作費について。
どこの業界も同じだと思いますが、いま(いや、もう10年以上前から)、CM業界では、「予算がない」という言葉を聞かない仕事がない、といっていい状況が続いています。
いわゆる「バブル崩壊」は、CM業界にとっても大きな意味を持っていました。
企業の業績が悪化すれば、まっさきに予算縮小の憂き目に遭うのは、広告宣伝費です。だからと言って、宣伝しないでモノは動かない。
企業は、予算を切り詰めるだけ切り詰めて、少しでも効率のいい広告作りをしたいと考えます。
おかげで、長いこと、CM制作の現場では、クライアントから、きびしい予算を提示される傾向が続いています。

広告全体から見れば、テレビCMの制作費は、一部分でしかありません。
CMを作っても、テレビで流さなければ意味がないわけで、放送の枠を買う、いわゆる媒体費に、大きなクライアントになれば、制作費の何倍もの費用を投じることになります。
かつて、CM業界に勢いがあった頃は、この「テレビでCMを流す費用」で、業界全体が潤っていたと言ってもいいかもしれません。
ぼくが、この業界に入って間もない頃(70年代の終わりから80年代のはじめにかけて)は、テレビでCMを流すために、大量のオンエアー・プリントを納品していました。
まだ、CMが16ミリのフィルムにプリントされ、オンエアー一回につき一本のフィルムを納品していた時代です。
大きなクライアントのメイン商品になれば、それこそ、何百回とオンエアーされるのですから、その分、つまり何百本ものオンエアー・プリントが必要になり、そのプリント料金で、制作会社も潤っていました。
それが、80年代半ばには、ビデオテープでCMを納品するようになる。
オンエアー・プリントは、テレビ各局に一本、極端な場合、ほんの数本、納品するだけになりました。
制作会社の利益は激減です。

そして、バブル崩壊をはさんで、テレビ各局も、オンエアー料金をつりあげ、媒体費で潤っていた広告代理店も、なかなか利潤をあげにくくなってきました。
以前は、CM制作費の利益は度外視して、媒体費で稼ぐという余裕が、大手広告代理店にはあり、制作会社が無理を言えば、代理店からある程度の予算を引き出すことができたのです。
CM制作における、きびしい予算という傾向は、業界全体の、利潤を生む構造そのものが変わってきたことにもよります。

その結果、広告代理店も、制作会社も、CM制作そのもので利益を上げなければならない時代になってしまいました。
でも、制作費が少なくなったからと言って、CMのクオリティーを落としていいわけではありません。
むしろ逆に、思うようにモノが売れない時代になると、どんな宣伝が効果的か、企業にも迷いが生じるため、なかなか企画が決まらない。決まらないから、広告代理店やクリエーターも、つい予算を度外視した企画を出してしまう。
ぼくら制作の現場の人間が関わる頃には、予算はない、だけどすごい企画を考えてしまった、いいCMを作らなければ後がない、そんな負のスパイラルのなかで仕事をせざるを得ない環境ができあがってしまっているというわけです。


(2008年01月31日)

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