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第22回 北海道と、ある広告クリエーターの関係

北海道のみなさん、こんにちは。

今日は、「CMができるまで」をいったんお休みして、ある北海道出身のグラフィック・デザイナーをご紹介したいと思います。
葛西薫さん、1949年生まれの、58歳。かつてぼくがいたサン・アドという会社の取締役副社長でもあります。
実はいま、銀座のリクルートが運営するギャラリーで、葛西さんの若い頃から現在に至るまでの作品を網羅する展覧会が開かれていて、ぼくも一昨日、やっと行くことができました。



葛西さんのデザインの特徴は、なんと言っても、その繊細さにあります。静けさの中に力強さがある、落ち着いた、ちょっと職人肌の大人の表現が魅力。たとえば、もうかれこれ25年も続いている、サントリー・ウーロン茶のCMを思い浮かべてみてください。あるいは、ソニーというブランドのイメージ。みなさんはたぶん、高品質で上品なイメージを持たれると思いますが、それにも葛西さんのデザインが一役買っているはず。80年代から90年代にかけて、多くのテレビやオーディオの広告手がけていました。
ぼくが、ご一緒したのは、サントリー・モルツのCM。1986年の新発売から数年間、葛西さんがアート・ディレクションを、ぼくがCMの演出を担当しました。
広告のクリエーターが作り出すものに、出身地というものがどれほど影響するものなのか、よくわかりませんが、ぼくは葛西さんという人が作るものに、どことなく「北海道」を感じます。
ここに、一冊の本があります。
「NORTHERN・北の風景」、操上和美(くりがみかずみ)さんという、1936年生まれ、北海道出身の大変著名な広告写真家の写真集です。この本のデザインを手がけたのが、葛西さん。
葛西さんと同じように、若くして北海道から東京に出て、押しも押されぬ大成功を収めた写真家が、何十年ぶりかに自分の出身地、富良野を訪ねて撮った記録写真です。
操上さんにとっては懐かしい人や風景を撮ったこの写真集から、ぼくが感じるのは、まさに殺風景という言葉があてはまる、厳しさと寂しさ。そして、その風景を見ている(つまり撮っている)人の、澄んだ、透明感のある感性です。
「澄んだ、透明感」。まさに、それを、葛西さんのデザインからぼくは感じます。
澄んだ水のようなクールさ、よく切れるナイフのようなシャープさ。その裏側にある、少年のようなまなざし。頑固さ。芯の強さ。流行りのものをとらえる嗅覚。
そんなものを、強く感じます。
かつて葛西さんが、自分の好きなものとして「海産物と夕暮れ」と言ったのが、忘れられません。ぼく(ちなみに岐阜出身)なら、「野草と川」かな?
人は、子どもの頃見た風景を、ずっと抱えながら生きていきます。
北海道出身のクリエーターは、心の奥に、どんな風景を抱えながら生きて、それが作るものにどう影響するのか、みなさんならきっと想像しやすいですよね。
たとえばサントリー・ウーロン茶のCMを見て、みなさんは、いかにも北海道の人が作ったような感じを持ちませんか?
あの繊細さ、頑固にトーンを変えない強さに、ぼくは「いかにも北海道」を感じるのですが、どうでしょう?
葛西薫さん、ちょっと気に留めてみてくださいね。


(2007年11月22日)

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